別に私はキリスト教の信者ではないから、生命の神秘を冒涜するのがい けない、などと言う倫理的な話をするつもりは毛頭ない。だが、多少はこ の考え方を継承しているかもしれない。
私が嫌なのは、そういう遺伝子研究の利が人々の幸福につながる、など と言う思い上がった考え方が大嫌いなのだ。つまり、「あんたらそんなに までして長生きしたいんか？人生の中身をよくすることも考えずに、いた ずらに生きる時間ばかりを伸ばして、人間より生命時間の短い生き物たち に申し訳ないとか思わないのか？」と言うことだ。例えば、多くの昆虫が その殆どを見た目の醜い幼虫時代ですごし、見た目の美しい成虫時代はほ んのわずかだったりする。それは悲しいことだろうか？そもそもそういう 一生に同情したりする人がいるだろうか？あるいは、不治の病に犯された 人たちの人生の最後が美談として語られることがよくある。それは不治の 病にかかることが必ずしも不幸ではない、と言うことだと思うのだが、い かがだろうか？
科学の力で長生きすることが人々を幸せにする、と言うのは勘違いもは なはだしいし、そんなことで長生きするような人生はクズのような価値し かない、と私は考える。僕はクローン人間が出来ても、自分のコピーを作っ たりはしない、自分は自分でしかなくて、そのコピーがこの世に存在する 必要などないと考えるから。
<97.07.16>