自殺の是非はここでは論じない。僕が強く引き付けられるのは、彼女にとっ て恋愛が命を賭するべきものであったと言うこと。別に私は中島みゆきなどの フォークファンではないが、そういうヘヴィな感情は、実は命の重さを具現す るものなのではないか、と思う。今の時代は女子高生の援助交際に見られるよ うに、自己主張が強いにもかかわらず、実際には自分を全然大切にしない時代 である。自殺は逆に自分を大切にしない最たる行動ではあるが、そのきっかけ となった（と思われる）恋愛問題に深く傷ついた自我の痛ましさがひどく痛切 な生きることの重みに対する説得力を持っている。
芸能人はどうしても私生活を切り売りしなければならない部分がある。きわ めて個人的な恋愛沙汰でもマスコミからのマイクが向けられる存在だし、しか し彼ら彼女らが感じる日常的な恋愛感情は我々一般人のそれと基本的に変わら ない。言ってみれば、可愛かずみは同様の出来事に傷つき悩んだ女性や男性に 代わって殉教したようなものである。最近では数年前の尾崎豊の夭逝があった が、彼も自分の死によって、図らずもファンの人々の生きる苦しみみたいなも の純化してくれた効果はあったのだと思う。宗教じみた話になってしまったが、 まさに彼らは自らが悩み苦しむ神になってしまった、と言える。そういう物語 は誰もドラマや映画などで語られることでは十分ではない。それこそが僕がこ の事件に真実味を覚えた最大の理由である。
この事件には多くのマスコミが色々な解釈を試みているが、彼らの興味本位 な推測よりも、我々自身が議論し、語る価値のある事件なのではないか。現実 の日常の中で、誰もが一度や二度死にたい、と言う絶望に襲われることはある。 その絶望の先にある自らの命を絶つ行為、と言うものを目の前に見せつけられ た今、まさに感傷的な絶望と命の重さの比較を行うのにふさわしいチャンスだ と言う気がする。
＃そんな訳で、最近は片っ端から芸能ゴシップ週刊紙に目を通す私であった:-)
<97.05.16>