一言で言って、痛快。思想としては、メチャメチャ右寄りです、国粋主義者 だし、軍備増強は当然だ、と言ってるし。しかし、僕は氏の主張に何ら破綻を 見出すことが出来ない、見事に筋が通っているのである。いや、筋が通ってい るかどうかは、僕は彼の言っていることが本当かどうか検証するだけの材料を 持っていないので分からない。しかし、このような反時代的な発言を堂々と著 して出版したことへの誇り、責任、と言ったものが行間の隅々にまで溢れてお り、圧倒的な説得力を持って読み手に対峙してくるのである。
右寄りな意見を引っこ抜いて僕なりに要旨をまとめてしまうと、今の日本は 倫理の拠り所となる物を全て捨ててしまった、だから風紀も乱れきってしまっ たし、偽善がいつのまにか正義とすり替えられてしまって、海外諸国とはとて も太刀打ちできない幼稚な議論しか出来なくなってしまった、と言うこと（こ こで言う偽善とは、例えば広島や長崎に原爆投下されたことに対し、本来なら ばアメリカを憎むのが人間として本来の感情なのに、そうではなく、戦争反対、 原爆反対、と言う奇麗事にすり替えられてしまったこと）。
別に僕は、チャパツの若者、ルーズソックスの女子高生がはびこることがそ んなに乱れたことだとは思っていない、少なくとも、ヨーロッパの失業した若 者なんかに比べたら全然おとなしい、日本がヨーロッパと同等の失業率になっ たらどうなるか分からないけど。だけど、大人の風紀については言いたいこと がたくさんあるね、薬害エイズとか、動燃の事故とか、住専問題とか、今の時 代、大人が偉い、って思えることって何一つないでしょう？はっきり言って、 僕は親を尊敬することなんて出来ない、７０、８０を過ぎてなお性犯罪で捕ま るほどのあきれるほどのパワーを持った人ならともかく。子供の偏差値をご近 所に自慢して回るような親を尊敬できると思う？だったら自分の会社での功労 でも自慢すりゃいいのに。いまや親が「乗り越えるべき存在」じゃなくなっちゃっ たんだよ。
戦争反対を唱えているくせに、戦国武将をヒーローに祭り上げるなんて矛盾 を平気でやっている大人たちははっきり言って許せない。だったらこの福田氏 のように「戦争は決して悪ではないし、命が必ずしも善とは限らない。むしろ お国のために命を差し出すような覚悟を強いた時代にこそ、その強い緊張ゆえ に命と言うものが輝いていたのではないか」と言う主張はものの見事に「まと も」に思える。少なくとも、装甲車に乗っていい気になってるチンピラ右翼ど もとは桁違いに深い考察を巡らした上での主張であり、僕は拝聴に値する書物 だと思った。