（４）不敬な世紀

　世界大戦を２度も引き起こし、科学の進歩に伴い大量殺戮兵器を生み出して
しまった２０世紀。もちろん人類は過去にも戦争という過ちは何度となく繰返
してきた。しかし今世紀のそれが過去のものとは全く違う、と言えるのは、無
差別な殺戮が行われた、と言うことに尽きるだろう。ホロコーストや南京大虐
殺、あるいは広島と長崎。
　今でこそ極一部の地域を除いて表面的には平和な時代を取り戻したかのよう
に見える。しかし、私が問題としたいのは、２０世紀は人類が「不敬な存在」
に成り下がったターニングポイントだということだ。今日の過激な少年犯罪は、
まさに人々が不敬な生き物へと退化したことの露出としか言い様がない。
　私たちはもはや、普遍的な道徳的価値観を共有することが出来ない。ニーチェ
が「神は死んだ」と宣言し、宗教がもはや政治の道具と成り下がり（このこと
は別章であらためて語ることにする）、情報過多は誰の言葉を信じていいのか
分からない状況を作り出してしまった。２１世紀においても、この勢いは衰え
る気配は残念ながらない、いやむしろ加速さえしそうな感じだ。
　私が言いたいのは、道徳を取り戻し、平和な世界を取り戻そう、などという
説教師のようなことではない。他者や自然や神仏への敬意を失ったこと、この
ことは２０世紀の人類の退化の証明として糾弾し、また後世へと語り継がなけ
ればならない、そういう義務感を感じている、と言うことだ。そもそも、この
ように２０世紀を語ろう、などと思いついたのは、本質的な部分で人類のバカ
さ加減に失望と怒りを表明したいがためにやっているのだから。