自分の奇怪な運命に嫌悪感を覚えながらも、朱美は新しい恋が始まったことに
嬉しさを覚えずにはいられなかった。タケシの電話には返答せずにいたら、家ま
で見舞いに訪れたが、つい居留守を使ってしまった。
　それよりも、もう４日も会社を休んだままだ。このあとどうしようか、と朱美
は考えた。やはり生活していくためには会社に出なければ、と思いつつ、悩んで
いたところに、同僚の晴美から電話が来た。
　「ねぇ、こないだ電話した時は返事がなかったけど、いったいどうしたの？そ
んなに具合悪いのならお見舞い行くよ。とりあえずこれから行くからね。」
　朱美は会社で美人として目立つ存在であるため、彼女の美貌に嫉妬している女
性が少なくない。そんな中で、晴美は顔立ち、性格ともにごく平凡な女性で、彼
女とぶつかるようなことがなかった。性格的に朱美と近い、とは言えないが、そ
れゆえ晴美は朱美の数少ない、腹を割って話せる友達だった。晴美は朱美が休ん
だその日の昼休みと、次の日の朝一に電話をくれていたのだが、その頃はとても
電話に出るような気力が起きなかった。２日目の夕方にも電話をくれて、その時
は出たのだが、
　「全然平気よ。ちょっとひどい生理が長引いてるだけ。」
　と、適当に言いくるめてなるべく早く電話を切ろう、と言う感じで対応したの
だった。
　４日目の夕方、電話の通り、晴美は朱美の家へやってきた、果物と雑炊の冷凍
食品を持って来て。
　「何よ、元気そうじゃない、びっくりさせないでよ。」
　そういう一方で、晴美は部屋の中をキョロキョロ見回した。それは女の直感が
働いて周囲に注意をするような視線の動かし方だった。
　「朱美、もしかしてあなたが休んでる理由って………」
　晴美は、朱美がレイプされたのだと考えた。女性の一人暮らしの部屋にはあま
りないすえた匂いがする。その匂いの源泉は彼女が被っている布団にあるようだっ
た。部屋の中もどことなく荒れているような気がする。そのことから、晴美は朱
美が不法侵入した誰かに強引に犯されたのだと思ったのだ。だが実際には、毎朝、
目が覚めると股間の巨大キノコが朱美を強烈な快感で襲い、その時吐き出させる
白濁液がこのすえた匂いの原因であった。最近はティッシュですくえばよい、と
言う知恵を働かせるようになったが、それまでは布団の中に垂れ流しだったし、
夢精の時などはどうしようもなかった。会社を休んで、暇を持て余して雑誌など
を読み散らかせていれば、自然と部屋も雑然としてくる。その中にベビーフェイ
スが忘れていった男性アダルト誌もあった。
　晴美が匂いをかぐように彼女の布団に寄ってきたので、
　「ごめんなさい、私最近シャワーを浴びてないから、少し臭いかもね。」
　「なんだ、それならそうって早く言ってよ。いいわ、私が朱美の体を拭いてあ
げるわ。下着はどこ？」
　晴美は勝手に洋服ダンスの引出を調べ始める。下着の収めてある引出を見つけ
た晴美は、しかし不審なものを発見した。男性用トランクスがなぜ朱美の部屋の
洋服ダンスにあるのか、レイプではなく同棲なのか、などと想像を巡らせつつも、
晴美は朱美に質問するのをためらった。朱美の方もその引出を開けられては困る、
と思いつつも、言おうとする前に晴美に開けられてしまったのである。朱美は恥
ずかしさに顔を赤らめた。
　晴美は新しい下着を取り出してきて、桶に湯を汲んできて、朱美の隣に座る。
ちょっとしわがよっている朱美のパジャマを脱がせる。朱美は晴美の手がパジャ
マにかかったとき、一瞬イヤイヤをした。
　「やだ、朱美ったら子供みたいに照れちゃって、カワイイのね。」
　別に照れているわけではない、自分の裸を見て、勃起するのが怖かったのだ。
しかし、晴美の優しい瞳に朱美はそれ以上抵抗することが出来なかった。
　朱美は目をつぶっていた。晴美は朱美のブラジャーをはずし、上半身を完全に
裸にした。すえた匂いが気にはなるが、とにかく絞ったタオルで体を拭く。晴美
は朱美のきれいな肌にうっとりしながら、体を拭いていた。肩から伸びた長くて
細い腕、褐色色の日焼けの後に眩しい白さを見せ付ける２つの胸の谷間、その頂
上にさくらんぼのように赤く染まった乳首、少し腹筋もついている引き締まった
腹部。晴美は何か芸術作品を磨いているような気分だった。
　「今度は下半身よ。脚を上げて。」