[CDREVIEW] Rush / Time Machine Tour 2011 Live in Cleveland

　パンクロックにしろ、プログレッシブロックにしろ、かつてのロックは聴き手
の「世界観を広げる」ための教科書だったんだと思う。自分の身の回りの日常だ
けでなく、国とか世界とか宇宙全体に目を向ける、少なくとも意識が拡張するこ
とで若者の世界観の拡張に貢献していたと思う。そもそも世界が見えて来ないと
「将来の夢」も見ようがない。
　今の時代は内向きと言われるが、意識を拡張させてくれるロックのヒット曲が
ほとんどないことからすぐに分かる。「等身大」の世界観が売り文句だなんて、
僕からみたら「器が小さい」と言うマイナスイメージでしかない。テクノやダブ
に多少意識の拡張を感じるくらいしかない。
　Getty Lee、Neil Peart、Alex Lifesonの最強ロックトリオ、Rushはプログレ
にありがちなアルバムフォーマットの長編作品（ブログレの名曲には20分30分と
言う大作が少なくない）にこだわらず、シングルフォーマット中心にリリースを
重ねてきた。しかしNeil Peartの深淵な歌詞の世界観、Getty Leeのブログレの
世界観の中にもキャッチーさを外さないメロディ、そして３人の妥協を許さない
リハーサルで強靭さを備えたサウンド構築で40年近くもコンスタントにリリー
ス、ライブ活動をする現役バリバリのバンドとして現在もシーンに君臨してい
る。このアルバムも今年のライブ、中古レコードなんか漁らなくても簡単に新譜
が手に入る。プログレッシブロックの中でも分かりやすい彼らの音楽に接して、
若い人にも世界や宇宙に向けた意識の拡張を是非お勧めしたい。
　個人的に思い入れがあるのはPresto、Subdivisions、Time Stand Stillとかか
な。DVDも注文したので早く届かないかな。