AKB48論

　とりあえずここでは俺らみたいな社会人ヲタは除外して考える（笑）、なぜな
ら総選挙の話じゃなく「国民的アイドル」って何？と言う話をしたいから（１人
のアイドルに何百万注ぎ込める人たちだけでは国民的アイドルは生まれない）。
　昭和の国民的アイドルは、あくまでもテレビの中のアイドルだった。AKB48の
場合、かつては「会いに行けるアイドル」だったが、それを脱した現在でも「擬
似クラスメイト」なんだと思う。つまり、総選挙とはクラスの学級委員選挙みた
いなもの。
　つまり、昔のアイドルは実際のクラスメイトがいて、彼ら彼女らと「ごっこ」
をするためのコミュニケーションツールだった。休み時間に教室の後ろでビンク
レディーの「UFO」を友だちと踊ったり。しかしAKBの場合はメンバーがクラスメ
イトそのもの。彼ら彼女らにはリアルなクラスの友達がいない、もしくは反転し
て目の前のクラスメイトが「擬似クラスメイト」になってしまっている、と言う
現代的な学校事情が垣間見える。
　総選挙そのものがものすごくファンとアイドルの関係に擬似的にドラマツル
ギーを作り出す。ファン自身が投票し、AKBメンバーが結果に一喜一憂する。
　恵比寿マスカッツの場合、そうした擬似的ドラマツルギーを笑いに変える。わ
ざとらしいお涙頂戴のシーンで笑いを取るのは、そうした擬似ドラマツルギーの
ニセモノ性を暴いていると言う点で健全だ。
　リアルなクラスメイトとのコミュニケーションに悩んでいる若者たちの姿が、
AKB48と言う擬似女子クラスの裏にあるのだと思う。