[DISKREVIEW] 阿部真央／ふりぃ

　普段ディスクレビューはある程度まとまってから送信しているが、今回は阿部
真央デビューアルバム１枚で。それだけポテンシャルのあるニューカマーだか
ら。

　この人は自分のカリスマ性と言う物をどれだけ自覚しているのだろうか。１８
歳（今度の２４日で１９歳になるけど）でこの風格、先日のLIVE SUPERNOVAの感
想では「椎名林檎の再来」と言う書き方をしたけれど（確かに声は似ている）、
このアルバムを聴いたらもう彼女すらも超えてしまったかのように見える。
　フォークギター１本で大分から東京へ１人上京して来た。どこにでもありそう
な風景でありながら、彼女の覚悟は他の誰よりも一回りでかかった。優しい歌も
歌うけど、激しい歌声には彼女が音楽と心中してもいいほどの覚悟で、１９年間
でここまでの完成度の高い作品を作って来たのだ。あまりのパワフルさに、逆に
壊れてしまうのではないかと思わせながら、しかし彼女は前進することをやめな
い。阿部真央ほど音楽の「中身」と言うものを意識させたアーティストは近年い
ない。フォークからロックへの越境はボブ・ディランやＰＰＭの時代からあった
伝統的な道程ながら、誰もこれらのアーティストを古臭いものとしてほこりをか
ぶったままにしたりはしない。彼女の歌もまた、ほこりをかぶることを断固とし
て拒否する強い意志をもって生まれでた楽曲ばかりだ。静かな風景に囲まれなが
ら生きていきたい、と言う人には少々刺激の強い楽曲ながら、決して生き急ぐ
人々だけが立ち止まる訳ではない、今を生きる人々全てが彷徨う今と言う時代を
スパッと切り裂いてくれる彼女の歌には目を見張らずにはいられないから。