CROSS MOUNTAIN NIGHT @ WOMB

　間違いなく今年最大の注目株であるJames Holdenが来日！これは行かねばなる
まい、とWOMBへ。個人的にはポストJohn DigweedもしくはポストJohn Creamer 
& Stephane Kと言えるダークハウスの最右翼、という認識。ダンスフロアという
のは単に踊るだけの場所じゃない、音楽を通じて別世界を体験する空間でもある。
音楽を現実の日常の延長ととらえるか、現実とは別世界と考えるかは人それぞれ
だが、これから体験するのは明らかに後者。日常の喜怒哀楽とは全く別の観念の
世界がそこにはあり、容易に言葉では現せない、音楽でしか表現できないものが
そこにはある、と思う。今日は本社で宣言大会があり、更に常駐先の宴会があり、
といろいろ飛び回って忙しかった。その現実は現実でいろいろ思うところはある。
だが時々そんなものはどうでもいいと思う。宣言大会では仕事のモチベーション
についてもいろいろ意見が飛び交う。仕事を面白くする工夫、「やらされ感」で
はなく自発的に取り組めること、等々。だが「やらされ感」は仕事に対してだけ
じゃない、人生そのものについても「やらされ感」はつきまとう。正直な話、
交差点では信号を守る、と言うこと一つについても納得してないような人間
だから（笑）。家にはまだ生まれて２ヶ月の妹の赤ん坊がいる。赤ん坊というの
は常に泣き叫んでいる動物。そんなにしょっちゅう泣き叫ぶほど辛いのに、なん
で生きてるんだろう、と思う。自分ももちろん泣き叫びたいことは数々ある、そ
う言う辛さ悲しさをごまかしながら生きている。数少ない喜びのために生きてる、
と言う言う問題以前に、「ごまかし」と言うウソで人生は固められてるんじゃ
ないか、と思う。単刀直入に人生なんてうぜえ、面倒くせえ、と叫んでみたいの
だ。そんな面倒臭くて嘘くさい現実とは全く違う世界を観に行く行為。
　WOMBには０時半頃到着、先々週のアニバーサリーと代わらないくらいの込み具
合だ。どうやらマジで大ブレイクしているらしい。エントランスも４０００円と
いつもより高め。レセプション前にはいつもパーティのアナウンス（出演DJ名）
があるのだが、それがない。
　入った時はTORSTEN FELDがプレイ中。そうか、今日はCROSS MOUNTAIN NIGHT、
テクノのパーティだ。個人的にはプログレッシブハウスの延長で注目しているが、
テクノシーンからも注目されているらしい。ジャンルを横断しての人気、となれ
ばこの込み具合は理解できる。普段はきっともっとアッパーなセットなのだろう
が、今日はかなりダークなセットになっている。と言うか、最近の彼のＤＪスタ
イルに色濃く影響を与えているのだとも言える。続いてDr.Shingoのライブ。
すでに満員のフロアは抑えめのテクノにも関わらずすごい盛り上がりだ。
　２時にいよいよJames Holden登場。安っぽい言い方かもしれないが、まさに「
神降臨」と形容するにふさわしい。純粋に天才肌のＤＪだ、とても２６歳の若手
とは思えぬオーラ。ヒッピー風に伸ばした髪と甘いマスク、元々レイヴァーであ
った匂いを残していると同時に、オックスフォード大学出身と言う知性を背景と
した素晴らしいクールさが誰にも真似の出来ないJames Holdenの世界を作る。踊
っている最中にこれだけ叫んでしまったのは久しぶりだ。既存のハウスでは予想
もしなかった狂ったダークなメロディをハウスフォーマットのビートに乗せてい
く。
　実際には久々に金曜夜のクラビング、平日の睡眠不足があるので３時頃になる
と眠くてたまらない。フロアでは睡魔で半分気を失いながら（笑）踊っていたが、
何しろ激込みのフロアだ、足下がおぼつかなくなって転びそうになっても隣の人
によりかかれるので立っていられる、という状況。別に眠くても根性でフロアに
いるわけじゃない、もうラウンジには休憩するスペースも残っていないほどの
込み具合なのだ。先ほど現実とは別の世界を覗きにいく、と書いたが、だからク
ラブピープルというのは現実の人たちじゃないのだ、と理解する（あのファッショ
ンから、日常生活、つまりどんな職場、どんな学校に通っているのかを想像する
ことは全く出来ない。時にはこの人たち地球人じゃない、宇宙人だ、と思うこと
さえも）。後半大詰めになり、テクノっぽいハイピッチになっていく。
　ということで、今年のクラブシーンの伝説になること間違いなしのパーティは
５時に終了。終了時間にまだ誰も帰っていないパーティとなった。店を出ると雲
一つない快晴の春の朝。まるで彼主催のレーベルBorder Communityのジャケット
のように純粋無垢な空だ。