ちょっと遅いX'mas＆ありがとうConcert @ 豊島公会堂

　川嶋あいの歌声には、謙虚に耳を傾けなければ、と言う気持ちにさ
せてくれる。洗練されていない、無謀なほどに素朴な楽曲、しかし大
人も顔負けなほどメッセージ性のある言葉の数々、その力強さ。
　豊島公会堂、と言うロケーションがまたいい。池袋のど真ん中では
あるが、“オシャレ”と言う言葉とは全く無縁の、学生の発表会やお
年寄りの集会に普段は利用されていなさそうな、本当に垢抜けない建
物、サンシャイン通りを通ってこの建物に辿り着くと軽い衝撃さえ覚
える。しかし、“チャラさ”ばかりが膨張しきった現代的クリスマス
のイメージを壊し、本来の敬謙な気持ちにさせてくれるロケーション
としては絶好だと思った。道に迷うかと思い早めに出たので開場前に
到着、前の公園でウロウロ。ホームレスはいなかったが、この寒さは
家のない人には相当厳しいものだろう。彼女のサイトのＢＢＳを読ん
でいると、同世代の女の子ファンが多いのかな、と思ったが、８割以
上は大学生前後の男子だった（笑）。ただ、年齢層の幅が広く、ごま
塩頭のオジサンもポツポツ見かけた。
　大きくない会場（キャパ１０００人）とは言え、なんと１列目の席
だ。路上１回、渋公１回しかライブを見ていないオイラみたいな人間
がこんなグッドポジションでいいのだろうか、と謙虚な気分にさせて
くれる。開演を知らせるブザーがまるで場末の映画館みたいだ。
　最初にステージに現れたのはマネージャさんだった、いきなりこの
ギャグ（大学生なのに女子高生の制服コスプレだ（笑））、肩透かし
を食らってちょっと驚いた後、笑わせてもらった。何しろプロの興行
業者が仕切っているのではない、学生ボランティアがこのコンサート
を企画したのだ、あいちゃんはいちおうプロデビューしている歌手で
はあるが、今も路上ライブを続ける人であり、本当の“手作りコンサー
ト”である。
　前半の彼女は白のワンピース、バックはピアノ、アコギ、コーラス
と言う、バラード志向のもの。２曲目にクリスマス曲と言うことで、
辛島美登里の「サイレント・ナイト」をカバーしていた。開演前に歌っ
て欲しい曲のアンケートを取っていて（私は残念ながら投票しなかっ
た）、ベスト１０が発表された。５位：旅立ちの朝、４位：時雨、
３位：天使たちのメロディー、２位：南十字星、１位：旅立ちの日に、
となった。５〜２位はサビのフレーズのみ歌ったが、１位はフルコー
ラスで。メジャーデビューはまだシングル１枚だが、路上ですでに６
枚のアルバムを出していて、こうして古くからのファンから愛されて
いる楽曲が沢山あることを再認識させられる。
　中盤は小イベント、司会が２名出て来て、あいちゃんもＴシャツ
（このコンサートのためのもの）にジーンズと言うカジュアルな衣装
で登場。先ずは彼女のニックネームを考えましょう、と言うコーナー、
結局あっさりと「カワシマ」で行くことに。続いて抽選コーナー、あ
いちゃんがソフトボールを会場に投げ、取った人に景品を差し上げる、
と言う形式。あいちゃんでは２階席にボールが届かない、ということ
でナゾの助っ人登場（笑）。更に当選者にはステージにあがってもら
い、あいちゃんから直接景品を手渡しされます。最後はあいちゃん来
年の目標。１：路上ライブ１０００回達成、２：（失念）、３：紅白
歌合戦出場を目指す、と言うもの。あと、特別ゲストにあいちゃんが
飼っている犬のドナチャン登場、それと、来年公開予定の人気小説
「DEEP LOVE」の映画化にあいちゃんがなんと主題歌担当になった、
と言う嬉しい話題もありました（原作者のヨシキさんも舞台に登場）。
　後半は黒のドレス、とても１７歳とは思えぬ大人びた雰囲気。来年
２月１８日発売（去年の２月１９日に路上ライブをはじめたので、そ
の記念日に発売、ということらしい）の新曲を披露。完全な新曲と、
twelve seasonsの歌詞とアレンジを変え、「１２の季節」というタイ
トルで再発表、の３曲。アンコールは２曲、最後は「天使たちのメロ
ディー」で締め。
　それにしても、彼女ほど「歌う」ことに誠実な人をちょっと知らな
い。と言うか、今時の子とは思えぬほど“真面目”だ。ＭＣは日々の
出来事を話すと言うより、１曲１曲に込めた思いをしゃべる。下手を
すれば説教臭い、とさえ思えるような本当にまじめな解説をする。だ
が、僕は若干１７歳の女の子のそうした言葉に強い説得力を感じてし
まう。優しいメロディの裏側に、オイラなんかかなわないほどの強い
勇気を持った彼女のまじめさ、強さが垣間見える。そんな彼女のこと
だから、やはり地球の裏側の争い事にも、涙を流すほど真剣に考えて
いて、それを歌に託している。５０億を超える世界人口の中のたった
一人、と言うちっぽけな存在をすでに彼女は自覚している。理想論な
ど口にせず、自分のできること＝歌うことから始める、と言う謙虚な
姿勢に心打たれる。謙虚な気持ちにさせられるとは、そういう事だ。
少なくとも彼女の歌は、歌うことと生きることとが表裏一体になって
いる。素朴の歌を歌う１７歳の女の子に、２１世紀的カリスマ性を感
じる。これが僕にとって今年最後のコンサートになった。

＃実は同じ日、サンシャインシティでは樋井明日香ちゃんのデビュー
＃イベントがあったらしい。こっちもちょっと行きたかったかも（笑）。