From music-fans-request@mclaren  Tue May 14 09:07:19 1996
Date: Tue, 14 May 1996 09:07:12 --900
From: sana (Cazou "ACID" Sanada)
Subject: [music-fans:00306] Yui Nishiwaki Concert

	西脇唯コンサート「ふたりのあいだ」	at 中野サンプラザ

  夕方の突然の夕立。昨日の暑さとは打って変わって冷え込んだ天気。なんと
なく気分が落ち込む一日ではあったが、そんなことを気にしても仕方ない、コ
ンサート会場の中野サンプラザに足を向ける。外で待つ間の寒さがまたしみる
ものがあった。

  思えば、去年のコンサートは東京で取ったチケットが関西転勤のためにふい
になってしまったのだった。ＴＶ出演のあるような人ではないし、アルバム
「ふたりのあいだ」や数枚のシングルのリリースがあっただけであまり音沙汰
のない人。しかし、その間に僕はファンクラブに入会したりして、一時で忘れ
去るべきアーティストではないことを胸に刻んでいた。

  コンサートとしては比較的遅い１９：００スタート、そして実際の開演時間
は更に１５分余り押す。ステージのシルエットの向こう側に唯さんの姿が映る。
何かとても不思議に思えた、デビューアルバムからずっと応援して来たアーティ
ストが、２年以上の長きを経て初めてその動く姿を観た、それも生に。残念な
がらあまり曲目は覚えていない、それは多分、他の誰かと共有することなく、
長い間一人心の中で温めてきた楽曲だから。誰かとコミュニケーションしない
のであれば、そこに名前は必要ない。しかしこれだけは言える、彼女の曲はど
れも粒揃いの良い曲ばかりだ。

  ちょっと大袈裟な表現になってしまうが、彼女のＭＣはまるで病人のように
枯れている。線の細いソプラノボイスで歌っていても、彼女にはヘヴィな仕事
のようだ。だからと言って、「弱々しくて、抱きしめたくなるようなタイプ」
という女性ではない、と思う。彼女の歌には、悲しみを乗り越えてでも一人の
人を愛し続けようという、ささやかでありながらも芯の強い女性像が浮かぶの
だ。

  前半のトピックは、彼女が森口博子に提供した「あなたといた時間」。開演
前にロビーでＣＤを発売していたが、本人の作品の中に森口博子のこのシング
ルがあったことにちょっと驚いたが（まぁ、元々は唯さんはモリグチを始めと
して他の歌手に作品を提供するソングライターとしてスタートしたのだけど）、
この歌を聞いて納得。

  前半はこの病弱そうなイメージ通り（オイオイ）、バラード系が中心。しか
し、いくら静かな曲が多いとはいえ、黙って聴くだけで唯さんに反応を返さな
いのは寂しい気がしていた。ところがである、彼女が衣装替えをし、赤いセー
ターと原色のカラフルなスカートで登場するといきなり会場はヒートアップ、
スタンディングで手拍子をする流れへと変わった。「「二人」に帰ろう」みた
いなじっくり聴かせる曲だと思っていた作品がこうして盛り上がった会場でノ
リノリの状態で聴いてみて、また違う魅力を発見。

  かすれた声でぼそぼそとしゃべる彼女は、時としてエンターテイナーとして
は少しばかり無愛想に思えることがある。しかしその答えは「ふたりのあいだ」
というコンサートタイトルにあったようだ。大変な事件が多い時代に彼女は一
番小さな人間関係の単位、「二人」について考えていたそうだ。軽はずみに愛
情や友情を語ってみたところで空しくなってしまう時代に、自分の気持ちを一
歩一歩固めながら大切な人との関係を築いて行こうとする彼女の姿だった。噛
み絞められたその言葉こそが、愛すべき彼女の姿勢だと思った。切ない歌、悲
しい歌、元気な歌、力強い歌、唯さんのいろいろなタイプの楽曲はどれも好き
だ。アンコールでは黒のラメ入りのジャンバーとパンタロンという実にカッコ
イイ姿で歌い、あっという間に２時間が過ぎていった。これから彼女の私小説
集「愛することはやめない」を読もうと思う。

E-Mail: sana@McLaren
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                                             I am against C*D*A.