From music-fans-request@mclaren  Tue Apr 23 21:22:42 1996
Date: Tue, 23 Apr 1996 20:49:24 --900
From: TIS Kazuhiro Sanada 
Subject: [music-fans:00300] Yutaka Ozaki

	／尾崎豊

　未発表作品集。正式リリースの予定のなかった音源のようで、当然荒削りな
ミックスである。でもそれが却って聴く者のセンチメンタリズムを強く呼び覚
ます。

　基本的には僕は作品の善し悪しとアーティストのパーソナリティは無関係な
ものだと思っている（いい作品ならアンダーグラウンドな洋楽アーティストで
もミーハーなアイドルでもいいのさ！）。とは言え、尾崎豊となるとやはり本
人の「生き様」に目が行ってしまう。言い換えれば、本人のパーソナリティも
また作品の一部だった。良い意味でスキャンダラスな存在だった。

　そういう存在感のあるアーティストだけが、「魂の叫び」を作品としてサマ
になるものにすることが出来るのだろう。今の時代は聴き手の方が自意識過剰
な時代（その象徴がカラオケでしょう）だから、ただ変わっているだけでは浮
いてしまうだけ。ボブ・ディランやジム・モリソンが活躍した６０年代ならい
ざ知らず、８０年代後半から９０年代にかけて彼のようなカリスマが登場して
きたことは奇跡に近いことのように思える。

　私的な言葉の美しさ。カリスマとは言っても何かを声高に叫ぶのではなく、
「自分は自分らしく生きるのだ」ということを自らに言い聞かせるように発せ
られた歌は、聴き手が自らの言葉として胸に刻み易い。最近はもっと一般的な
ヒット曲にも応援ソングが多いが、それは身の回りにいる友人の存在が、ひょっ
とすると心の奥まで打ち明けられるような親しさに至っていないせいかも知れ
ない。こんなことを書いてしまう自分がきっとそうだ。

　真面目に生きていれば彼の言葉にぶつかるだろう。これは宗教のように信仰
する言葉ではなく、これから考えを巡らすための出発点の歌だ。

					sana@jmt.