DISKREVIEW: Salvador Sobral / Paris, Lisboa (Warner Music Spain)

　サルヴァトール・ソブラルのセカンドアルバム。別にポルトガルのジャズ、ポッ
プスだからといって、肩肘張ったり、取っつきにくいところは全くない。クラシッ
ク的な気品と、ヒーリングテイストのポップさ。昔流行ったAORではないが、日本
の音楽シーンが未成年相手の商売になっている感が強いと思っている人にはオスス
メの一枚。
　彼のアルバムは、彼自身のボーカルも素晴らしいのだが、やはりJulio Resende
の素晴らしいピアノとのコンビネーションによるマジックが他の音楽には真似でき
ない、プライベートでソフトな味わい、そして国境も時間も超えるクラシックにな
りうる成熟した音楽になっている。Pressagioなどはまさにその味わい。アルバム
に先行して最初のシングルMano a Manoはオリジナルバージョンをさらにシンプル
にし、極めてミニマルな、Erik Satieみたいな肌触り。シンプル極致の美しさ。
　彼の姉、Luisa Sobralもシンガーソングライターだが、今回、Prometo Nao
Prometerと言う曲でデュエットを聞かせてくれる、上質のボサノヴァナンバー。
　しかし個人的には、彼の新境地を見せるような軽さと癒しを持ったAnda
Estragar-se Os Planosが無限リピート。
　彼の歌唱は基本はもちろんポルトガル語。外国語曲は英語のPlaying With The
Wind、スペイン語のGrandes Illusiones、フランス語のLa Souffleuse。あと、
Paris, Tokyo IIと言うタイトルの曲があり、日本にも関心があることをうかが
わせる、アッパーなジャズナンバー。少なくとも、ヨーロッパは日本文化を常に
意識している。
　ユーロビジョンコンテストの優勝で、おそらくヨーロッパで彼の名を知らない
人はいないが、彼自身は身体が弱いようで、ユーロビジョン優勝直後に休業して
いる。ただ、現在はアルバムリリースに伴い、全ヨーロッパツアーを回っている。
日本では知名度がないのでなかなか来日のハードルは高いが、是非来日公演を実
現して欲しい。