芸能人範田紗々デビュー

　エッチビデオにも関わらず、なんとも言えず切ない感動がある。いや、下手な
映画より感動すると言い切ってしまおう。そもそもが、ＡＶというものが台本通
りに進むものであるのに対して（もちろんこの作品にも台本はあるのだが）、
紗々ちゃんの今回の作品は明らかに生々しいＡＶ初出演のドキュメンタリーであ
る。そうか、これはごく普通の少女のどこにでもありそうでここにしかない、そ
んなドキュメンタリーなのだと思う。ＡＶ出演の経緯を尋ねるインタビューはあ
るものの、その言葉は表面的に文字通りには受け取れない、そう言う心情の奥深
くに潜む淀んだ風景は決して言語化され得ないものだからだ。だが作品の中で
紗々ちゃんの仕草の一つ一つをじっくり観ていると、確かに彼女の想いは言葉よ
りも雄弁に語ってくれる。そうした行間の語りの豊かさがこの作品にはあり、か
くしてＡＶの形をした感動的なドキュメンタリーとしても鑑賞できる。そして、
感動的だからこそのオカズの味わい方があるのではないだろうか。一般のＡＶが
セクスィなお姉さんの色香に誘惑されることがその作品の価値だとすれば、紗々
ちゃんのこの作品は、言葉をかけることさえためらわれるような初恋の人の心の
内を覗くような、そう言う疑似体験をするエッチビデオなのだと思う。そこには
セーラー服だのスクール水着だのと言った中途半端なフェティッシュでは決して
たどり着くことのできない、“性の目覚め”に回帰するようなめくるめく体験を
味わえる。私はそんなにＡＶを多数観て来たとはとても言えないが、だがこれは
“傑作”の太鼓判を押していい作品だと思っている。