[MOVIE] 東京裁判@ユーロスペース

　小林正樹監督の東京裁判がデジタルリマスターで再上映、と言うか、私は初見
だけど。4時間37分におよぶ長い作品、次の予定があり最後まで見れないが。１日
１回の上映なので混むだろうと予想、開演１時間前に到着、案の定席の９割が埋
まっていた。時間まで渋谷で野暮用をこなす。
　さすがデジタルリマスター、戦前の映像とは思えない鮮明さ。モノクロではあっ
ても、まだ当時の生き証人がいる立派な現代である、と感じさせる。
　広島長崎の惨状もさることながら、アメリカの核実験の映像が鮮明過ぎて言葉
を失う。
　物語は、とにかく世界史でもあり日本史でもあるこの時代をきめ細かく描く。
素人の私には知らない史実もあるが、学者なら全て知っていなければならない重
要な史実が並ぶ。
　前半はそうした史実の描写、すなわち「映像の世紀」的な貴重な映像が続く。
むしろ自分的にはこちらの方が重要、裁判は戦犯を裁くが、戦争の本質はそこで
はない。実際、裁判のシーンでは被告人同士が対立するなど、法廷での争いは戦
場と全く関係ない。
　それにしても、今の時代と時代の空気が似ていて恐ろしい。民主主義も共産主
義も関係なく、戦争は１人ではできないものであり、民衆の熱狂によって起こさ
れる。むしろ法廷の冷静な場は戦争の狂った現実とあまりに解離している。
　もちろん、この映画はナチスドイツを裁いたもう１つの裁判、ニュルンベルク
裁判とセットで知らなければならない。と当時に、あのような残虐性の成り立ち
を知りたい。