[ART] アドルフ・ヴェルフリ展@東京ステーションギャラリー


<2017/May/13(Sat)>

 と言うことで東京ステーションギャラリーにアドルフ・ヴェルフリ展を観に。
私にとって5本の指に入る偉大なアウトサイダーアーティスト。
 なんと言うのかな、世の中からはずれた人が生み出している、と言うことに本
当の“人間らしさ”を感じてしまうのだ。初等教育も満足に受けられず、性犯罪
者として2回牢屋に入り、人生後半の25年間は精神病院で送った中で生み出され
た膨大な作品群。たぶん、高い教育で育ったアーティストが作る作品はいずれそ
のうち人工知能に取って代わられる。しかしこういう突然変異的な存在感のある
アーティスト作品は絶対に人工知能には真似できないと思うからだ。あと、徹底
した独り遊びが結実していると言う点でも共感。今日の「みんなで何かを成し遂
げる」と言う価値観は一歩間違えば全体主義。私は徹底した個人主義を貫く彼ら
の姿勢を断固支持する。
 先ほどの上野の美術館ほどは混んでない、じっくりと作品と向き合える。と言
うか向き合わないといけない。何しろヴェルフリの作品はこれでもか、と言うほ
どまでに細部を緻密に描いた作品だからだ。その一方、細部の細かさとは反対に、
全体的に見ても新たな発見がある。完璧な私的世界観、全体も細部も既存の芸術、
そして作品が発するメッセージが異なる。
 教育をほとんど受けていない一方、彼の作品は文字が多いが、文字が素晴らし
く美しい。言わば、この人は文字すらも発明したとさえ言えるほど。作品の中で
発明したものは他にもある。行ったことのない世界各地を自身のイメージが完全
に作品に落とし込み、あるいは数字の単位なんてのも発明している。完全な私的
世界観とはそういうことだ。
(講演会に続く)