[MOVIE] シチズン・フォー@シアターイメージフォーラム


<2016/07/10(Sun)>

 参院選とはあまり関係はないが、私は近頃のISのテロに怒っている。もちろ
ん暴力的な手段に訴えていることも問題だが、それ以上にソフトターゲットの意
味不明さが不愉快でならない。テロをするなら、それなりの大義名分、すなわち
極悪な政府から譲歩を引き出す目的があってしかるべきだ。単に人を殺し、住民
や旅行者に恐怖を撒き散らすだけなら、日本人の方がむしろ動機不明の無差別殺
人で上を行っている。そんな変質者の行為と同レベルの殺戮は、テロと呼ぶ価値
さえない、ただの無差別殺人でしかない。そもそも、恐怖を煽るだけなら、僕は
テロよりも現在も地球上に5万発あると言う核兵器の方がよほど戦慄すべきもの
であり、その感性を失っていることからしておかしいと思っている。
 果たして、この意味で日本は安全なんだろうか。政治的意図のないテロは政治
的意図の下に行われるテロより安全とでも?しかも厄介なことに、テロリストは
今やヤクザよりも一般市民であることが多い。いや、ヤクザと言うのは政府の代
わりに治安を維持してやる、と言う大義名分があるから決してテロなど起こさな
いのだが。とりあえず、こんな狂った日本社会、いや世界全体を変えたいのだが、
何しろ民意の方が狂ってる時代だからどうしようもない(イギリスは民意の役に
立たなさを暴露してしまった)。参院選の結果予想についてもかなり絶望的だ
(改憲勢力が3分の2を占めてしまうのではないかと悲観)。
 だから、なんかね、たくさんの人の行動より、エドワード・スノーデンのよう
な単独行為の方が世界を変えられる希望があるように思わざるを得ない。
 映画は、リアルにスノーデン氏が英国の新聞、ザ・ガーディアンのジャーナリ
ストにCIAのインターネット上のハッキングの実態を暴露し、香港、モスクワに
亡命するところまでも描いており、こんなに克明に記録している映画があるとは
知らなかった。ジャーナリスト自身もブラジル、ベルリン、ベルギーを飛び回り、
CNNニュースにも出演する。あと、ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏や
オバマ大統領も登場したりして、まさに真実を暴露する作品となっている。
 もちろん、スノーデン氏の行動を圧倒的に支持しているからこそ、この映画を
見に行った。その一方で、生の自分の生活の中で、恐れているのは本当に政府の
監視なのだろうか。確かに自由な議論をし、デモに参加して自分の意志表示をす
るには(もちろん選挙もそうだ)プライバシーが大事だ。しかし、日常的に恐れ
ているのが実は政府ではなくポピュリズムである(ネット右翼はここでは意味を
狭めてしまうので避ける)ことに、この映画を観ても救われない自分がいる。ネッ
ト炎上の動機は悪意ではなく正義感だと言う。本来誰もが持っている正義感が歪
んで民主主義を潰しているのだとしたら、これほど絶望的なことはない。
 とはいえ、“発言する勇気”はこの映画を観て強く感じた。SNSで簡単に発言
できようと、治安が悪い都市で街頭で演説をぶちかますのであろうと、自由な言
論には責任があり、リスクがある。その覚悟を受け入れて発言することでしか、
人類は前に進めないのだと思う。
 さて、この映画を鑑賞中に参院選投票が締め切られ、今頃は結果が分かってい
ることだろう。今のところニュースは観てない。どんな結果が待っているのか。