From movie-fans-request@mclaren  Tue Aug 20 01:42:00 1996
From: 真田一宏 
Subject: [movie-fans:00212] Jean-Luc Godard
Date: Tue, 20 Aug 1996 00:50:10 +0900
Content-Type: text/plain; charset="ISO-2022-JP"

	Tout Va Bien 万事快調	re'alise' par Jean-Luc Godard

　ゴダール７２年の作品。典型的なゴダール節に貫かれた作品。
　結構ユーモアの面ではわかりやすかったかな。一人の人物にスポットを
当て、３〜４分のながきに渡ってセリフをしゃべらせるシーンは他のゴダール
作品でもしばしば見かけるが、場面がストライキの現場という、政治的な
場面なので、カメラに向かってつばを飛ばすように熱くなって演説する立候
補者のような滑稽さが笑えた。
　この工場の舞台が、これまた学生の芝居のごとき安っぽい張りぼてで
あることを臆面もなくさらしている、この挑発的な態度も感覚的にゴダールの
好きなところ。そこにイブ・モンタンなどというフランスを代表する人物を配役
して許されてしまう。
　まぁ、作品に対する小難しい評論はやめにして、ゴダールの面白さという
のは、このような異様にリラックスしている彼の態度だ。彼は社長も小ばかに
したノリでカメラをまわすけど、同様に労働者たちも陽気でお馬鹿な連中と
して描いてしまう。政治的な主題でありながら、彼は何も主張しない。
ただ、どうしようもなく世の中のありとあらゆるものを皮肉らずにはいられない
彼の唯一無二のおおらかでクールな態度がとても好きだ。つまり、僕自身が
インターネットをこんなくだらない与太話に使うことにアウフヘーベンを感じて
いるのと同じなのだ。

					DEEP ACID