非現実の王国で/ヘンリー・ダーガーの謎@渋谷シネマライズ


<2008.04.06(Sun)>
 アウトサイダー・アートを代表するアーティスト、ヘンリー・ダーガーの生涯
を扱った映画が先週より公開になったと聞き、渋谷シネマライズへ。内容は「非
現実の王国」の物語(ダーガーの絵がアニメとなって動き出す!)に、ダーガー
の生立ちが挿入される展開。もっとも生立ちも本人が語ったわけではなく研究者
が調べた程度のものなので、何処までが本当かは不明(って明らかな相違がある
わけではないけれど)。淡々とした展開に、彼の孤独ながらもとてつもなく豊穣
な想像の世界が広がる。
 実のところそれほど映画としては面白くなく、疲れもあって多少爆睡してし
まったのだが、そんな訳で内容よりも個人的感想を。彼の創作物からは少し話が
それるが、恋人がいないとか、友達がいないとか、そう言う人生が否定されがち
な世の中で、そんなことはないぞ、恋人や友達がいなくてもそれだけでは否定し
得ない人生はあるんだ、と声高に主張してみてはいるのだが、なかなか説得力の
ある言葉が見いだせない。しかし、ヘンリー・ダーガーの生涯を見ていると、ま
さに恋人にも友達にも恵まれなかった孤独な人生にこんなにも豊かな時間と世界
が存在し得る、ということを雄弁に物語っている。ニートだとか引きこもりだと
か世間に後ろ指さされても気にすることなんかない、自分だけの素晴らしい世界
を持っていれば孤独なんて何も怖いことはない、そんなことを教えてくれる物語。