[ART] Henry Darger展＠品川・原美術館

　雑踏の渋谷を抜け出し、品川へ向かう。原美術館なんて１０数年ぶりで道順も
忘れた。京急線北品川駅まで出てしまって、御殿山方面へ戻ったりする。かなり
歩いた、だが御殿山の静かな住宅街にそっとたたずむ美術館を見つけ、ホッとす
る。
　午前中に観たモディリアーニとは対照的な世界。モディリアーニが豊かさの中
に深い悲しみと哀愁を漂わせているのに対し、ダーガーはひどく孤独で辛い現実
の前に、能天気とさえ言えるほどのポジティブなエネルギーをカンヴァス（と
言っても彼の場合は高級な画板など使ってはいないが）にぶつけ、空想する世
界。シカゴのごく貧しい老人の一人暮らしの部屋で何十年もかかって営まれた空
想の産物は、しかし日本のアニメオタク文化とも“ロリコン”と言うキーワード
において奇妙に通底するものがある。きっと本当はどちらも同じもので、日本で
はうまく商業主義と手を組むことができただけなのかもしれない。死後まで商業
主義はおろか、そもそも人前に姿を表す事なく老人の孤独な愉しみとして積み上
げられた想像の世界の豊穣さに驚く。
　いずれにせよ、自己満足が否定される現実社会に生きる中、今一度アウトサイ
ダーアートに見られる中途半端でない真の自己満足の世界に哲学的な何かを気づ
くことがあってもよい。いわゆる「自分らしさ」なんてのはたいていが他者から
見ればどうでもいい自己満足にしか映らなかったりするだろう。精神に障害を負
うまでに至った強い疎外感、孤独感を被った人間が本気で「自分」を守るために
築き上げた「非現実の王国」の豊かさ。
　おまけ、ここの美術館のガーデンカフェは最高だ。都心のど真ん中で風に揺れ
る葉のささやきと鳥のさえずりに耳を傾け、心地良い春風に時が経つのを忘れ、
うとうととした気分で日曜の午後をゆったりと紅茶をすすりながら過ごす。テン
ションを上げて過ごす週末も楽しいが、美に包まれ、春の心地良さに身を委ねる
休日も悪くない。と言うことで、範田紗々ちゃんイベントスキップしちゃってゴ
メン(_o_)ｗ