天国病棟＠新宿モリエール

　前回の「星のお姫さま」でチケットの確保にちょっと苦労したので今回は早め
に予約しておいた。ところが時の流れが邪魔をする、と言うか、その日に本社に
帰る予定が入りかけたり、やっぱり客先で打合わせがあるので行かなくてよくな
ったものの遅くまでやる可能性があったり、と２転３転。おまけに雨だぜ（苦
笑）。それでもなんとか会社を６時１５分頃には出ることが出来た。腹の減り方
が尋常でないので立ち食いソバしてから都営新宿線に乗り，新宿三丁目へ。今回
は近い会場で良かった、前回みたいに下落合だったら果たして間に合っていただ
ろうか。
　新宿繁華街に位置するシアターモリエール、前回のTACCS1179より広めとは言
え、それでも２００人も入れば満席の小劇場、そんな粋なスポットがあるとは
ね、新宿も悪くない。
　ダンカンさんが座長を務める東京サギまがい、演劇の素人としてはやはりコメ
ディだろうと予測していた（前回の星のお姫さまもかなりロマンティックなスト
ーリーではあったがコメディだった）、しかし今回のお芝居、かなりシリアスで
ある。何しろ舞台は病院、主役たちは皆死期の近い末期ガン患者である。これは
一体どうなるんだ？と思いながら幕の進むのを追って行った。
　さてのぞみさん、前回はコメディの中でずっとシリアスな役であったが、今回
は逆にシリアスな人生回帰の物語の中でむしろ笑いを取る側に回る。常にユニー
クな役のポジションにいますね。
　病床の暮らしをしていた４人の患者たち、１人ずつ最後の回想に観客と共有さ
れる至福感がなんとも素晴らしい。回想の物語としてはありきたりと言えばあり
きたりだ、だが普段はコメディで人を笑わせる役者たちの迫真の演技に、何度目
頭を熱くさせられたことか。一家心中の回想で最後に見せた切ない生への意志に
先ずグッと来て、笑って選択を間違えた、と言ってはばからない女房への最後の
愛のメッセージのさりげない優しさ（こういう＜平凡な暮らしの中の幸せ＞と言
うテーマをやらせると、実はコメディアンが一番説得力があるのだなあ）。のぞ
みさんの可愛さはここではその平凡さと対置されてしまうのだが、役の幅を広げ
るには悪くない配役だったのではないでしょうか）、そして医師と言う職業につ
いて回る危険な手術への倫理的な迷いを昇華させた天国からの娘のメッセージ
（鳥羽まなみちゃんの好演が光ってました）。単に人生の物語、と言うより、人
生そのものがぶつけられていた、と言ったら言い過ぎだろうか。生のお芝居でハ
ンカチを手にしたのは初めてのことだった。
　終演後の舞台挨拶でも、普段はテンション高いコメディアンたちも照れを隠さ
ずにはいられないような感じ。その照れこそがまさにこの舞台を作った役者たち
の魅力なのだった。終演後、のぞみさんのライブDVDなんてものがあったので、
つい買ってしまった。のぞみさん、まだお芝居は始まったばかりだけど、残りの
舞台ガンバって。