Dancer In The Dark

　いまさら説明不要のカンヌグランプリ、パルムドールを受賞し、ビョーク
が主役のこの映画、朝一番で行ったから座れたが、その後はダイブ立見も出
たと予想する。
　何と言っても、ビョーク演じるセルマの強い生き様に感動する。粗筋だけ
見ると、お涙頂戴の演歌な世界なのかもしれない。でもセルマが歌い踊るシー
ンの興奮が、そんな凡百の作品から一線を画している。
　この映画が個人的に面白い、と言うか新しいな、と思ったのは、「逆ＳＦ」
的なディテールだ。鉄板工場とか、ディーゼル機関車とか、重厚長大系の20
世紀文明を象徴するイコンが主人公の不運に更に重くのしかかっていく。人
間がシステムに対決する、と言う構図は「メトロポリス」のようでもある。
そんな巨大なシステムを前にしてすら、息子に捧げる愛情の揺らぎない強さ
は一体何なのだろうか。もちろん一番泣けるのはクライマックスのラストシー
ンではあるけれど、彼女の強さを垣間見せるシーンでは何度も涙腺が緩んだ
（風邪を引いていたので、生理的にも涙腺が緩い状態ではあったが（笑））。
　パルムドールなんて言ったって、日本じゃ大した影響力はないもんだ、と
思っていた（今村昌平監督「うなぎ」の時もあまり盛り上がっていなかった
ような気がする）。しかしこの作品は違う、下手すりゃハリウッド映画を食っ
てしまいそうな人気っぷりだ（多分本当のライヴァルは「バトルロワイアル」
ではないだろうか？（笑））。つまり、これはビョークファンのための映画
でも、ヨーロッパ映画マニアのための映画でもなく、いい意味で一般大衆映
画なんだと思う。