Seul Contre Tous カノン


un film de Gaspar Noe'
<2000.10.15>
 「最高!」とか「最悪!」とか言った陳腐でストレートな誉め言葉/け
なし言葉がこれほど違和感がない作品も例を見ない。ただ単に奇抜な作品、
と言うだけではこれほど強烈な印象を残すことはできまい。正視できない
ような残酷なシーンの後に、心をわしづかみにするような人間の優しさが
待っているストーリー。こんな映画見たことないし、それ以上にこんな不
思議な感動を味わったことがない。
 実は今日の情報処理試験をサボってしまった。言い訳はいろいろあるけ
れど、そもそも言い訳を考えてしまう中途半端さ自体、なんだか自分が情
けない。そうしたダメ人間気分全開な日に観たのが、この極めつけのダメ
人間の物語。そのことが弾みをつけたのかもしれないが、そうでないとし
ても、僕はカッコイイヒーローなんかよりもこうしたダメ人間の方が感情
移入しやすい体質(それはきっと、ドラえもん世代の悲しい習性かもしれ
ない)。それゆえ、エンディングの救いは何物にもまして感動してしまっ
た。
 何にせよ、エロもバイオレンスも相当ヤバイレベルのR指定映画なのに、
こんなに刺激的で非道徳的で、ギャスパー・ノエ監督自身、カンヌ出品時
に「試写会上映中に何人途中で席を立つか楽しみだ」とのたまうほど挑発
的な作品にもかかわらず、最終的には見事なヒューマンドラマになってい
ると言う、これこそ怪作中の怪作だろう。終末思想に救いの光が差し込む
ような、宗教を超えるような美しい物語だった。20世紀最後の傑作。