From sana  Mon Dec  4 12:48:36 1995
Date: Mon, 4 Dec 1995 12:48:31 --900
From: sana (Cazou "ACID" Sanada)
Subject: [movie-fans:00144] Fridrik Thor Fridriksson

先週の映画の日に観に行った映画です。東京に戻ってきて初めての映画鑑賞かな？

	Cold Fever	directed by Jim Stark
			produced by Fridrik Thor Fridriksson

  Windows 95フィーバーというのは、ただ単に機械音痴のオジサン達をせせら
笑うだけではすまず、人間としての悲しみさえも覚えてしまう。ああやって時
代の流れに振り回されて、それでも頑張らないと肩を叩かれないか、と不安に
おののいているサラリーマンの姿にやり切れないものを感じてしまう。

  そんな絶望的な気分の時、旅に出たくなる、というのは万人共通の心情だろ
う。映画の設定では、両親の亡くなった地を訪れるために、主人公（永瀬正敏）
がアイスランドに向かうが、冒頭で東京のオフィスの風景にカメラが向けられ
る中で、僕は別の思い入れでスクリーン上の旅に出た。

  極寒の地である。車の故障などにあいながら、何度も死にそうな目に遭う。
お世辞にも楽しい旅とは言えない。永瀬も無口な主人公平田を淡々と演じてい
る。自然の厳しさゆえなのか、とんでもなくブッちぎれていて意味不明のギャ
グが飛び出したり、奇妙に幻想的なシーン（少女が奇声を発した途端、壊れた
自動車が復活したり）が現れたりする。そして、これがフリドリク・トール・
フリドリクソン監督の持ち味でもある。

  でもそういう自然の厳しさこそがファンタジーなのだと思う。しかも、旅行
者の目で捉える幻想であるばかりでなく、日常の現実として受け止めているア
イスランド人自らこの厳しさをファンタジーとして表現している。つまりは、
この荒涼たる自然に神を見出していて、素朴な信仰心のようなものでカメラを
回しているのだと思う。美しいものは地球の中心ばかりにあるのではなく、こ
うした辺境にも等しく存在していることに感動する。

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