From be1773@ni.bekkoame.ne.jp  Wed Feb  4 01:47:51 1998
From: Cazou ACID Sanada 
Subject: [movie-fans:00054] HANA-BI
Date: Wed, 4 Feb 1998 01:47:38 +0900
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	ＨＡＮＡ−ＢＩ		北野武監督

　久々に物悲しく切ない映画を見た気がする。世間での作品の評判より
も、コメディアンと言う外様が映画監督をする、と言うことに対して彼
なりの落とし前を作品を通じてつけることを重視しているような気がす
る。作品の中身を論じる前に、そうした監督の自らの作品への対峙の仕
方が先ず清々しい。
　言っておくが北野映画は僕は立派なヤクザ映画だと思う。暴力的で、
非教育的なテーマを扱っているわけだ、しかし彼の作品は国際的にも高
い評価を得ているのはご存知の通り。
　きっと彼はヤクザが身近にいる環境で育ったのではないかと思う。だ
からきれいごとで暴力はいけない、みたいな思想を簡単に肯定しない。
理想論を並べ立てず、辛い現実の中で自分の身の振り方を考える男の物
語。
　「男の美学」なんてものを振り回されたら耐えられないけど、人生で
大切にすべき伴侶に対する思いやりの情景はハンパじゃない深いものが
あったし、それに身を委ねる妻の態度も目頭を熱くせずにはいなかった。
岸本加世子があんな可愛い女を演じられる女優だとは思わなかった、も
ちろん子供っぽい可愛さとは全く違う可愛さだが。
　北野武はかなり古臭いビジョンで映画を撮っているような気がする、
だけどそのビジョンは確固たるもので、ビジョン無しに娯楽性や映像美
の追求なぞでお茶を濁している凡百の作品よりずっと響くものがある。
NotesのとあるＤＢでも最近、「プロなら生き様にも責任を取れ」みたい
な意見が出てたけど、これってまさに生き様を映画にしちゃったような
ものでしょう？だからこれこそプロ中のプロの作品、って言えるんじゃ
ないかな？お笑いタレントと言う、この世で最も沢山恥をかかなければ
ならない職業にいる人間だからこそ描ける、ものすごく深い人間のプラ
イドが滲み出ている作品。

acid@po.globe.or.jp or sana@jmt