Love for Green

（頭注：プロモオンリーでプレスされたＳＣＤ音源を聞かせて頂い
た感想です。なかなか入手は困難のようです）

　一聴してどこかお堅いイベントのために作ったと分かる抑揚のあ
まりない楽曲でありながら、美紀さんの声そのものが“緑への愛”
を象徴するかのような優しい抱擁感に満ち溢れていて、すごく安ら
かな気持ちになれる。実際問題、美紀さんに緑がお似合いであるこ
とは異論のないところではないかと思う。
　また別の見方をすると、このどちらかと言えば平凡な楽曲をいと
おしむべき“素朴さ”に変えてしまったところに彼女の地に足のつ
いた表現力のすごさを感じさせる。素朴さとか無垢さとか言葉で言っ
てしまうと簡単だが、小学校低学年の児童の描いた絵がその素朴さ
で万人を感動させられるかと言うとそうではない。表現者としての
素朴さはもっと高次元な所にある。
　ところで個人的な推測としては、このプロモーションのためのみ
にプレスされたＣＤが、ここに来て歌手活動を再開し、１３枚目の
シングルと３枚目のアルバムリリース予定へと結びついているので
はないだろうか。思うに、今や相当のポジションに登り上がってし
まった女優業の緊張感に比べると、この作品はボランティア活動と
して肩の力の抜けたリラックスした状態で出来たのだろう。そこに
はきっと素朴な歌うことの楽しさがあって、彼女自身の忙しさの中
に再び安住の地としての「うた」を見つけたのではないか、と想像
してみたりする。と言う意味では、小品でありながら、彼女のちょっ
としたターニングポイントになってないか、などと思ったりするの
である。まぁＳＣＤ１枚でこんなことを勘ぐられたら美紀さんもい
い迷惑かも知れないが（美紀さんごめんなさい）。
　最後に一言だけ。伴奏の中のクラリネットにデビュー曲「永遠に
好きと言えない」を連想せずはいられない。瞬間的ではあるが、彼
女はこの作品で自分の原点を見直したのではないだろうか。