このドラマを観ていると心が透き通っていくのが分かる、星が無数に見える 松本の夜の空がそうであるように。
この物語には今まで僕が体験しえなかった友情がある。それはもちろん、Ｔ Ｖドラマという絵空事の中のことだからかも知れない。だけど僕が自分の学生 時代に友情があそこまで育たなかった理由を見つけた上で、こんなにも友情と いうものが心地良いものか、と言うことを教えてくれた。
だから、僕は登場人物の一人一人が好きだ。酒井美紀のファンで見始めたド ラマだったけど、そうしないと僕は彼らとの友情が共有できないように思えた から。
人を本当に好きになる時は、心を裸にして無防備になるものだ。ところが今 の世の中はそんなことをしたら大変なことになるだろう。卒業を、受験を間近 にした彼らは、ブラウン管の中とは言えそれを実践していることがとても美し く思える。恋愛や友情を育むことが、受験や現実からの逃避ではなく、人が生 きる上での本質的なファクターであることを改めて思い起こさせてくれる。
だって僕はそんなことすら忘れていたんだ。口で言うほど恋する気持ちを相 手に伝えるのは簡単ではないし、友情を形にする伝統も、僕はついぞ習うこと がなかった。社会人になってもう長い自分がこんなことを思い出しながら、冬 の終わりの少しだけ春の気配のする都会を歩いて、珍しく幸せな気分になれた りする。
だからと言って僕は高校時代に戻りたいなんて思わない。時間の成熟と出会 いの奇跡無しには生まれ得ないこの友情は、時計を戻すだけでは手に入らない から。
ただ、３０を過ぎた今でも、このドラマを観ているといやでも短い青春の時 間に対する切ないほどの愛おしさが蘇ってくる。僕には「未来」という言葉は 大仰なものじゃない、明日をもっとよく生きよう、ただそれだけのことだと思 う。時の流れの手触りを思い出しながら、今を大切に生きたい、そんな気持ち にさせてくれるよ、このドラマは。