牧瀬茜＠新宿ベルク

　会社のクリパの後に新宿へ（東京テレポートからりんかい線→埼京線一本）。
新宿駅地下に40年の歴史を誇る喫茶店（といっても狭いので混んでいる時はカウ
ンターで立って飲食するバーに近い）ベルクで踊られるとのこと。あの狭い店内
のどこで踊るのだ？案の定、金曜夜はサラリーマンでごった返す。入口で毛皮帽
を被った牧瀬姐さんに挨拶、こうしてステージを降りている時に牧瀬姐さんに会
うと、思いの外小柄なのに気づく。
　22:30を少し遅れてスタート、雑然とした店内をかろうじて通行できるように
副店長さんが準備。ギターのJAKEさんはオーダーストップ後のカウンター前で
セッティング。牧瀬姐さんは黒シルクのドレスで登場。
　そこで為されたパフォーマンスは、普段の劇場でのダンスとは違う、一言で言
うなら“舞踏”に近かった。肩と肩とが触れあうほど狭い空間でサイケデリック
なギターサウンドをバックトラックにして店内を踊る光景はまさに“新宿ゲリラ
パフォーマンス”だった。これはダンスステージの観客audienceとしての体験で
はなく、時代の高揚の場面に立ち会った目撃者spectatorとしての体験だったと
思う。牧瀬さんのダンスは色っぽさを全面に出しながらも、ストファンだけでは
ない新宿ど真ん中の老若男女集う場所で己の存在感を強く前に出す攻撃的で力強
いパフォーマンスだった。自分のようなストファンとしてもいつものステージと
違う踊りを見ることができた満足感があったが、それ以上に初めて牧瀬さんの舞
を見た女性の皆さんが、牧瀬さんのただならぬ妖艶さにダイレクトに触れてカル
チャーショックを受けている様子が印象的だった。終演後のオベイジョンも激し
く、このパフォーマンスは後世に語り継がれる価値のある一夜だったと思う。