牧瀬茜/歌舞伎町で会いましょう


<2010.03.10(Wed)>
 買ったのは1/26だが、土日しか持ち歩かないので、ちょっと読むのに時間が
かかってしまった。
 風俗嬢、と言う生き方は、どうしても映画チックな波瀾万丈の人生なんだろ
う、と言うイメージがあった。しかしこの物語の主人公、きりん・れもんはごく
どこにでもいる元女子短大生で、ひどい暴力を受けたり(ドラマのクライマック
スとしてそういうシーンはあるが、彼女の職業的転機ではない)、家庭や友人に
とりたてて問題がある訳でもない。人間関係のちょっとしたボタンの掛け違いで
誰でもこの世界を選び得るものだと分かる。流されて生きているようでもあり、
一方で自分のことをよく見つめていて、彼女には彼女の『自分らしさ』が確かに
そこにあるようでもあり。
 牧瀬さん自身の人生がどのくらい投入されているのかは知らない。しかし、等
身大の風俗嬢のリアルさはすごいな、と思う。そして、見事に自分の立ち位置を
分かっている。これもまた、風俗嬢に対する偏見として、キャラが立っていて、
自分を客観的に見ることが出来ない女の子、と言うイメージを引き剥がされる。
最終的に彼女は自分の人生の選択を後悔するが、彼女がこの世界で生きて行く中
での様々な“あがき”はとても普遍的なものだと思う。
 いずれにせよ、いやらしい表現はほとんどなくて、今時ちょっと古風な女の子
のちょっぴり切ない青春ストーリーとして、心の片隅にいつまでも残るドラマ。