牧瀬茜舞台「ヒモのはなし」＠浅草リトルシアター

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　牧瀬さんのライブパフォーマンスを観に浅草リトルシアターへ。浅草の地を踏
むのは先週の酉の市から１週間、通ってる感覚（笑）。初日だからか、満席で席
を増やす状態。いややっぱりスト劇場で牧瀬さんを観られない枯渇感がファンを
集めてるのだろう。もちろんスト劇場ではない、だから女性客もちらほら。
　コンビの風間寛治さん、去年の共演でも素晴らしい脚本、素晴らしく熱のある
芝居、その中で牧瀬さんのスト劇場とはまた少し違う表情で人前に立つ姿を見事
にサポートするところは十分信頼があった。そして今回も見事な脚本、芝居には
素人な牧瀬さんでも、風間寛治の芝居舞台と言う空間の中で牧瀬さんしか出来な
い存在感を出してくれた。
　ストリッパーとヒモの恋愛物語なんて昭和枯れすすきみたいな一言では到底片
付けられない、普遍的な男女の機微がものすごく濃厚に詰まった１時間半の二人
芝居。なんと言うか、子どものままの自分には、先ずは恋愛から大人になれ、と
尻を叩かれるような物語。大人の恋愛にウソはないなあ、こういう文化（BGMに
は演歌とかブルースに混じって、宇崎竜童や矢沢永吉の作ってきた日本のロック
の深い人間性がにじみ出る）にあまりコミットして来なかった自分を一時的にせ
よ恥じ入る気分にさえさせる大人の恋愛の世界に圧倒されるお芝居だった。
　先日、アイドルには無闇に社会の縮図的なことはしてくれなくていい、みたい
な議論をした。だからと言ってアイドルが全て夢物語で現実と全く無関係であっ
ていい、と思っている訳ではない。ただ、社会の冷酷な部分がストレートに出て
いる彼女たちのシナリオは自分には重すぎると感じられる。その一方で、このお
芝居はまさに昭和の社会の底辺で生きる男と女の物語、世知辛さはアイドルのオ
ブラートに包まれた物語よりも重いはずだ。それなのにこの二人芝居がファンタ
ジーのような甘美さを覚えるのは別にノスタルジアだけではないだろう。むし
ろ、そこにあったのは“ウソのない愛の強さ”だった。単に時代では済まされな
い、根源的なサムシングが失われた時代の清涼剤。とにかく、風間さんの、この
歳になって分かる大人のカッコ良さにシビれ、牧瀬さんの自由な蝶のような気高
い存在感を堪能した。
　40人も入ったら大混雑な小さな芝居小屋。風間さんのセリフを借りれば“叙
情”と言うものがとても臓器の奥深くまで染み通るような良い芝居だった。見送
りでお話しした時にこんな感想が口頭で伝わるのか分からないが、そんな感想
と、また若松の香盤に戻って来る日を待っています、と言うことを告げて劇場を
あとにした。