[DVD-REVIEW] 牧瀬茜／Calling

　基本的にはストリップのステージは現場でしか見ることが出来ない。写真は劇
場でのポラしか撮れないし、ましてや動画がネットに流れることなど決してな
い。その意味ではライブステージが全ての世界だ。しかし逆に言えば、個人の記
憶にとどまるばかりで、歴史の記録としてなかなか残されない世界でもある（い
まだにファンがこうして文章にして残すのがせいぜい）。しかし牧瀬姐さんはこ
こにステージの記録をDVDに納めた。もちろん、この作品とて劇場に脚に運ばな
ければ手に入らない（通販での取り扱いは当面考えていないと言う）、という意
味では閉じた世界であることに変わりはないのだが、少なくとも後世に伝えるこ
とが可能な媒体を残したことの価値は大きいと思っている。
　個人的に嬉しかったのは、僕が初めて牧瀬姐さんのステージを見させて頂いた
のと同じ演目だということ。他の演目も見ているが、やはり初めて見た時の演目
というのは印象が強い、そのステージが記録されたというのは非常に嬉しいし、
ありがたい。最初軽快なポップスで明るいダンスから入り、徐々に荘厳な舞いへ
と向かっていく。牧瀬姐さんのほとばしるような色香は生のステージに比べれば
迫力に欠けるものの、その時の記憶をよみがえらせるには十分であるし、また、
ストリップを未経験な人にステージ上の踊り子さんの真剣勝負は衝撃を与えると
思う。
　特典のインタビューがわずか３分あまりにもかかわらず、深い。ステージ上の
姐さんも、お客さんも、何かを抱えて同じ空間、同じ時間を共有する。そこで交
わされる非言語的コミュニケーションが毎日毎時間異なる奇跡を生み出す。淡々
と話す牧瀬姐さんの言葉の端々に、静かに流れる誇りと情熱を感じた。やはりこ
うしてメディアに残したことは大きな価値があったのだ。