私家版「ボクの考え事」その１

マキケンの歌を聴いていると、おそらく今の世の中で最も彼が“素直で、ピュア
な”人間じゃないかな、って思えてくる。デビューシングル「おかしい」で、世
の中のおかしいと思える事柄を、包み隠さず歌ってしまう度胸の良さ。いや、本
人は度胸でもなんでもなく、何がなんでもその時々の自分の気持ちを表現したい、
という強烈な衝動に駆られただけなのかもしれない。

まぁその事は本人に聞いてみないと分からないことではあるが、それにしたって、
我々みたいな凡人は、薄々彼と同じようなことを感じていながらも、それを口に
出すことはタブーに触れるのかもしれない、と臆病がって口にしないし、そもそ
も口に出さないでいるうちにそういう事を感じる心すら見失ってしまっている。

今はインディーズがメジャーと殆どシームレスになってしまったせいか、インディー
ズですら一般受けを強く意識したような、癖のない退屈な歌しか歌っていないバ
ンドやシンガーがほとんどだ。放送自粛、リリース中止の憂き目と戦いながらが
んばってるアーティストが、２０年以上前から活動している忌野清志郎氏くらい
しか見当たらないのはどういうことだ？

そういう意味で、彼はロックンローラーでもなければインディーズアーティスト
でもないのだが、マキケンこそ本来のロックンローラーやインディーズアーティ
ストが持っていたスピリットを見事に体現している人だと思う。そういうアーティ
ストは、８０年代には佐野元春が、９０年代には尾崎豊がいた。そして２０００
年、牧謙次郎がここにいるのである。