Beautiful Rain

　音の隙間に緊張感が漂う、抽象的な歌詞に世紀末的な重苦しさが
漂う。聴く人を楽しくさせる、と言うそこいらに転がっているポッ
プスとは一線を画し、この世の中の淀みに真っ直ぐに目を向け、そ
の中から本当の光を見出そうとするかのごとき、ストリングの美し
さ。
　別に楽しいラブソングを聴いて平和を謳歌するのもいい。現実は
厳しいけど、音楽にその厳しさを見出す必要などない。だがあなた
の平和は沢山の不幸な人たちに支えられているのかもしれないし、
世界一不幸だなんて思うのなら、飢えで苦しんでいる発展途上国の
人たちのことを考えるべきだ。
　音楽を演奏したり聴いたりするのは、「音を楽しむため」だと言
う大原則はある。しかし学校教育が荒廃しまくり、宗教もカルトな
ニセモノばかりの日本では、拝金主義な政治家に代って、ミュージ
シャンがメッセージを世の中に投げ込む、と言うのもありだろう。
　逆になあなあに甘いことばかりを歌う歌よりも、骨があるし芯が
しっかりしている作品になっている。２１世紀になってしまったら、
もう２度と２０世紀へは戻れない、そんな当たり前のことを考えて
いる人がこの世の中に一体何人くらいいるだろうか。２１世紀の世
の中を良くするのも悪くするのも、私たち次第。牧さんのこの歌は、
その自覚を促すために２０世紀の終りに世に問い掛けた、そんな曲
のような気がする。