This is EROS

　先ずは何より、この写真集について語らなければ。この写真集の存在
について知ったのは、フラッシュだったろうか、とにかく写真週刊誌。
ＪＡＬスッチー、と言う肩書きが衝撃だったのは私にも同じだったが、
写真集を３０００円出して買う、と言う気持ちにさせたのは、他でもな
く彼女の完成されたボディ、そして、なぜこんなきれいな人が、と思わ
せる美貌。要するに、よい写真集を選ぶ上でごく当り前の選択理由があっ
たと言うこと。
　個人的に、ごく普通のアイドル写真集は買っていても、フルヌードの
写真集は中谷香織の他は杉田かおるしか持ってない。逆に言えば、香織
さんに対してはある意味アイドル視しているとも言える。
　タイトルこそエロスだが、個人的には観る者を挑発するような過激な
セクシーさが売りではなく、むしろカメラ視線に対して初心（うぶ）な
女性が今だけの自分の美しさを残そうとして、照れた微笑みを浮かべな
がらポーズを取っている、と言う感じ。その初々しさがこの写真集最大
のチャームポイントではないだろうか。
　いや、それだけではない、彼女の視線が時々、恋人に向けたかのごと
き甘えた表情、それがたまらない。素人と言うことで、表情が固い、と
言う評判も聞くが、そうしたぎこちなさの中に混じるこうした安心する
かのごとき表情に、無性に愛おしさを感じてしまうのだ。
　前半がそうした可愛らしさにポイントが置かれている一方、後半は芸
術性がクローズアップすべきポイントのようだ。モノクロの作品はまる
で彼女の美しさを時代を超越させるために真空パックしたかのよう。そ
して、彼女の裸身が“窓”の背景に生える。それは窓の外の太陽の光と
香織さんの裸身にお互いに馴染む、と言う、健全なセクシーさであるこ
との何よりの証拠。更には、ステンドグラスを背景にした作品群。これ
らには神々しさすら感じられた。おそらく山岸氏もプロの写真家として
のプライドをフルに込めた作品なのではないだろうか。
　何度も“オカズ”にさせて頂いたゆえ、装丁も外れてしまったこの写
真集だが（超苦笑）、いまだに飽きないし、エロスとは別の視点で見て
も本当に素敵な写真集。香織さん本人は仕事として撮ったものではない
ゆえ、世間に出せるようなものではない、とお考えなのだそうだが、逆
にそういう自然体が生み出した傑作なのだと思う。