jay walk 感想（と言うか、かなりの深読み暴走:-)）

　赤と黒のツートーンで彩られた表紙のショットが早くも妖艶の世界へ
誘う。赤いタスキには「元ＪＡＬスチュワーデスから女優へ転身！」と
ある。すでにスチュワーデスの経歴は過去のものではあるが、そこにあっ
た辛い歴史は、この写真集で見せる彼女の成長と無関係ではないのも事
実。
　闇の中で輝くかおりさんの裸身が眩しい。絶望の中で見つけた、一筋
の希望の光のように燦然と輝く。アイドルのように無闇に微笑んだりし
ない、シリアスな表情のかおりさんは、しかし、うつむいたりせず、しっ
かりと読者の視線を見つめている。誘惑の視線、と言うよりはむしろ、
人生と言う戦いの場に再び立ち上がったような戦士のような力強い視線
に思える。つまり、ここでの「闇」の意味するところは、エロスとして
の「秘め事」と言うニュアンスよりも、彼女がこれまで立ち向かってき
た“辛い現実”と言ったものの象徴のように思える。
　しかし、「エロス」の意味するところは何も性的な欲望に限らない。
生命力全体を総称してエロスと呼ぶならば、この写真集は間違いなくエ
ロスに満ち溢れていることになる。
　いや、むしろこの写真集にこそ本当のエロスがある、といってもいい
のではないか。凡百のグラビアヌード写真集がフェティシズムやコスプ
レと言った「記号」に頼った形式的なエロスでしかないのに対し、"jay
walk"のそれは、血の通ったかおりさんの美肌以外に何もない。赤や黒と
言った「色」が象徴するものは、彼女のエロスを包み込む“世界”を象
徴し（宗教的に言えば、善と悪の象徴みたいなものか）、また、和風の
家屋、温泉から溢れる湯、自然の緑、などの背景は、彼女のエロスをフォ
ローする“秩序”（倫理的に言えば、愛や友情のようなもの）を象徴し
ているのである。
　大人っぽいとか、色っぽいとか、そういう単なるカテゴライズの役目
しか果たさないような形容詞では説明できない、普遍的な美がこの写真
集には詰まっている。ある意味、とっつきは難解な写真集かもしれない
が（って、オイラが勝手に難解に解釈してるだけか？:-)）、その分、
長く愛される写真集になるはずだ。