Hardcore

　何と言ったらいいんだろう、何かを超越している、いや、全てを超越して
いる、この写真集ムックを一言で言い表すなら、そういうことになる。

　URECCO EXTRA ISSUEと言うことでグラビア雑誌の特別編集と言うことになっ
てはいるものの、一般の写真集以上に中身の濃い写真集ムック。その濃さの
概要が「幸福論」と言われる挿入詩によってリードされている。

　確かに、女優さんが写真集を出すからには、そこに物語と言うかコンセプ
トは必ずあると思うし、詩の挿入も決して珍しくはない。だが、大抵の物語
はフィクションであり、ファンタジー（幻想）であると思う。それに対して、
かおりさんがこの写真集ムックに詰め込んだ物語は、リアルな彼女の人生そ
のもの。

　孤独を嫌がる者＝単純に孤独が嫌いな人、は孤独からは何も学ぶことが出
来ない。しかし、かおりさんは孤独を怖れる者＝孤独を人生で避けることの
出来ないものと自覚し、対峙している人、は孤独から様々なものを学ぶ。こ
こにある幸福論、つまりこの写真集ムックの物語は、かおりさんが孤独から
学んだものの集大成ではないか、そんなことを思った。もちろんＢＢＳのレ
ス付けでもかおりさんのこのような幸福論思想は散見されるけれど、このよ
うな形にまとめ上げることで、そのパワーは何倍にも増幅されている。

　「flute」の感想で、"jay walk"がコンセプチュアルで芸術的、fluteを自
然体で等身大のかおりさん、と言う書き方をしたが、今回のHARDCOREは私小
説的、と言うことになるだろうか、それもかなり現代的な。jay walkの伊豆、
fluteの沖縄、と言うそれぞれ大自然の中での撮影に対し、今回は生活の場
である東京を選んでいるところにも現れている。

　個人的に思うところとして、かおりさんには矛盾（といっても悪い意味じゃ
ないですが）した２面性がある。つまり、ＢＢＳやドコアルなどデジタル世
界の最前線に活躍の場を置くが、その活躍の場こそ他のどのタレントさんよ
り我々ファンとの近しい接点をもたらす場になっている、と言う矛盾。だか
ら、かおりさんがコマ送りビデオフレームで撮ったショットがかえって生き
生きとした表情を捕まえるのに成功していたりする。女心の不可解さが男に
とって魅力的であるのと同様に、かおりさんのこの２面性は多分私にとって
抗し難いかおりさんの魅力の一つではないかと思っている（多分それは、私
が思うに、近未来に対して人類が描く希望として最も現実的であるものの一
つだ）。冒頭で述べた、「全てを超越している」と感じたのは、幸福論のパ
ワーと、それを包み込むかおりさんの２面性と言う磁場があるからだろう。

　コンセプトにばかり目を向けていたら、個々のショットについての感想を
書く余裕がなくなってしまった（苦笑）。と言うわけで、私はこの作品を写
真集と言うより、私小説、ないし手頃な人生哲学の書、として楽しんでます。