例によって、神経症気味（と言うか治療中）の女性、神田憂が主人公。何でも ない日常が、神経質な心から見える風景はとても激しくドラマチックに写る、そ の滑稽さが面白い。まぁちょっと寝不足や風邪薬の飲み過ぎ等で意識が朦朧とし ていたら、これと近い日常の風景に出会えるかもしれないが（例えば、今目の前 にあるティーポットの形だって、よく見ると滑稽だ）、そこはひとみさんならで はのユーモアがある。おそらくコンビニの店員に恋するなんてごく普通のこと が、切なさよりはむしろコントチックに描かれていて、この掲載雑誌（野性時 代）の、文学とコミックをまたぐセンスにあった、シュールでありながら大衆的 暖かみも兼ね備えた面白い作品。