金原ひとみ「憂鬱たち」（文芸春秋）

　ひとみさんの短編集。どの作品も主人公は神田憂、最近コミックのキャラク
ターに神田ユウと言うのがいるのを知った。

・デリラ
　これは立派なエロ小説。女の側から描くエロスもなかなかヤバイ。男がオヤジ
なのでオッサンなオイラにも感情移入しやすいし（笑）。

・ミンク
　ヘタなコミックより笑える！毛皮のコートを買いに来た主人公と、オシャレな
店なのにオッサンの店員とのやり取りが滑稽で最高！ひとみさんコント作家とし
てもイケるんじゃない？

・デンマ
　以前読んだ作品。こちらも主人公（もちろん神田憂）と店員の滑稽なやり取り
が最高！と言うか、主人公は鬱で悩んでいるはずなのに、コミカルなストーリー
のために全くシリアスさを感じさせない。ひとみさんは本気で憂鬱な気分を楽し
んでいるようだ。

・マンボ
　こちらも読破済だが、このとりとめのない可笑しさは最高だ。と言うか、とり
とめのない話が延々続くのはオバチャンの井戸端会議の典型的なパターン。ひと
みさんが齢を重ねてホントウのオバチャンになったら、もっと切れ味のあるコミ
カルストーリーが生まれるのかも。

・ピアス
　蛇にピアスとは全く違う作品。他の収録作品同様、精神科の病院にかかりに行
く積もりが、成り行きでピアッシングのお店に入ってしまうと言う、ちょっとあ
り得ない展開ｗ　ある意味、この本に収録された作品の妄想の爆走っぷりは、女
性版「失われた時を求めて」と言っても良いかもしれない。

・ゼイリ
　妄想がベースなのは変わらないが、確定申告の面倒臭さと言うテーマはオイラ
にも分かりやすい(^O^)
　最後に、主人公の鬱と言う形を取っているが、要するに「生きずらさ」につい
て神田憂は苦しんでいたことが分かり、生きずらさを飼い慣らして生きてきた自
分も深く共感。全く行動パターンについては男子のオイラにはイミフなものばか
りだった主人公も、最後に理解。

♯結局６作品中５作品はすでに読んでた（笑）。