鷺沢萌「失恋」

　ちょうどオイラも失恋中だったので、鷺沢さんのこの旧作を
手にした。この頃はまだオシャレ恋愛小説家だった。登場人物
の切ない気持ちに吸い込まれるようにどんどん活字が読み進ん
でしまうような作品。
　でも、（失恋によるものではないが）登場人物の中に死んで
しまう人がいある。自殺か、他殺かは不明のままだが、とにか
く作品の中に死んでしまう人が現れると、鷺沢さん本人のこと
につい思いをはせてしまう。遺された人たちは、死んだ人の気
持ちをどうしても詮索したくなる（その作品の中でも当然あれ
これ他の登場人物が推測を述べ合ったりしている）、だから、
つい鷺沢さん本人があの時どういうお気持ちだったのか、と、
読者としてついあれこれ詮索してしまうのである。失恋も切な
いが、やはり人の死にかなうものではない。
　あとがきで、「恋とはとても面倒臭いもの、それでも人は恋
をする」と言うくだりがある。これを読んだら、やはり鷺沢さ
んも失恋の痛手で、、、と勝手な邪推をしてしまう。邪推はと
もかく、軽い文体で読みやすいながら、やはり恋愛と言う物は
人間の生き様の一番深いところを左右するものだ、オイラみた
いなバカを悩ませるぐらいの力のあるものだ、と感じたのだっ
た。