Date: Sun, 25 Apr 2004 03:02:43 +0900
Subject: [lives-after-lives] アッシュベイビー

まだ最後まで読んでませんが、とりあえず感想。

　デビュー作が当たると、２作目がコケないかどうか心配になるが、
いやはや、個人的には「蛇にピアス」を超える傑作だと思った。
　主人公はキャバクラ嬢、スプリットタンをしたがる女の子に比べ
たら第一印象のインパクトは落ちる。しかし、ストーリーそのもの
より、文体のトンガリ具合にますます磨きがかかっており、読んで
いてドキドキしてくる。特に、自己分裂を起こしたところの圧倒的
な迫力の独白シーン。彼女の作品が単に肉体的痛みを言語化するこ
とだけ得意だと言うわけではないことを見事に証明して見せてくれ
る。と言うか、２０歳そこそこの女の子がこんな文章を本気で書い
ている。芥川賞作家と言う以前に、この人は本当に綱渡りのような
人生を渡り歩いているに違いない。
　もちろん、お得意の大胆な性描写、そして肉体的痛みに訴える表
現も満載だ。それにしてもおかしいのが、そうした文体で“純愛”
を表現していること。汚れた言葉遣いに、バッカみたいにストレー
トな恋愛感情が叩き付けられる。これもまた金原さんの独壇場とい
える表現手法。いつまでも怖いもの知らずなだけで小説が成功し続
けるとは思っていないが、少なくとも若さゆえの大胆さが彼女の小
説の重要な醍醐味であることは間違いなさそうだ。このままどうい
うエンディングになるのか、楽しみである。